中古住宅の「時間」とは何か(2)〜歴史と保守について

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写真(大阪市北区中崎町、202033日撮影)

アメリカ人は、innovationが優れている。シリコンバレーでは、最先端の技術が開発されビジネスが社会のダイナミズムを作る。一方、イギリス人は、アンティークの価値を尊ぶ。イギリスでも産業革命が大量生産の工業化の時代があったが、ウィリアムモリスのArtsCrafts運動が代表する中世への回帰があった。

Modern の語源は、model = 「模型」である。プラモデルPlastic model の素材のプラスチックは、自由自在な造形ができるので、非常に便利な素材だが、言わば美容形成外科のようなものである。本物ではないので、脆い。だから新築の建築物がいつまで価値を持続できるのか疑問である。

西部邁は、本当の「保守」とはprescription「薬局の処方箋」と説明した。つまり、保守とは過去を盲目に追従することではなく、今、この現実の問題を解決しなくてはいけない直近の課題に対して、我々はどう判断するべきか? ABか? その妥当な判断は、歴史によって証明される。つまり、歴史とは「バランス」の実証実験であって、したがって医者が患者にしい診断を下すprescriptionが、歴史であり、西部が言う本物の「保守」である。

仏教では「中道」と言い、中国では「中庸」と言い、ギリシアでは「メディア」と言った。古代の世界の異なる地域で、同じ思想が別々に生じた。これらは、AとBのどちらが良いか?という時、真ん中を選ぶべきだ、と言う意味である。

では真ん中とは何か? (A+B)/2 = 「中道」「中庸」「メディア」ではない。

AとBはいずれも両極端であり選ぶできではない。しかし、両極端の数学的な平均値でもない。正解は、「ほどよさ」「適当」「妥当」「ほどほど」である。

そしてこられは、歴史の経験の積み重ねによってのみ「道」が見えてくる。

中古物件は、過去の人の汗と、自分の汗の対話がある。過去の人が、「この家は、こうしたらいいよ。」「この家は、苦労したよ」と語りかけ、「いや、僕はこうした方がいいと思う。」「1日ペンキを塗ってみたら、足が今も痛いよ」と自分は語り返す。

建築物は、完成された結果ではなく、そこに至るまでのプロセスに意義がある。

今回は、やや哲学の議論になったので、今度は具体的な事例をあげてわかりやすく説明して行きたい。

関連記事:国際比較表

中古住宅の「時間」とは何か(1)〜国際比較から見える日本の新築住宅

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(写真:神戸御影 蘇州園)

日本では、新築が選ばれ、中古が選ばれない2番目の問題は、買主が「新築の方が中古よりも魅力的」だからである。

なぜ欧米先進国は、中古が新築より魅力的なのに、我が国では新築が中古よりも消費者は魅力を感じるのだろうか?

昨日私は、大阪市の中心にある江戸堀を歩いてみた。昭和初期築の長屋もあり、デベロッパーによる10階建以上の新築マンションもある。

ニューヨークから来た私の友人のハーバードの建築学大学院出の建築家が、町家のような長屋木造住宅を指差して、「日本にはあんな美しい建築物があるのに、なぜこんなUglyな新築マンションを建てるのか?」と私に質問して来た。10年以上私は彼の言っていることが分からなかった。アメリカ人建築家の目には、日本の一般的なデベロッパーが建てる新築マンションは、魅力的でないばかりか「Ugly」だと言うのである。

新築は、傷や汚れがない。配管が老朽化している心配もない。清潔である。しかし、どの物件も同じ玄関ドア、同じ壁紙、同じキッチン、同じ床、同じ浴室、同じトイレではないか。没個性的である。買主は、型にはめられた住空間に押し込められる。買主が物件に変更を加えようと思っても、新築購入に充てた費用がいっぱいいっぱいのため、追加で投資することができない。そうして消費者は、画一的なつまらない住宅の中で、重いローンの返済に追われて、ため息をつきながら一生を過ごす。

私の事務所は、堂島川沿いの中之島にある。休日の都心は人が閑散としている。お天気の良い日曜日に、「今日は日向ぼっこして、コーヒーでも飲んでゆっくりしたい」と思って、どこが良いか考えてみて、ほたるまちの川沿いのテラスのあるカフェに入った。街には人が歩いていないのに、店内はお客さんが満員であった。

(写真:福島1丁目 ほたるまち沿いのカフェ)

「ゆったりとした落ち着いた空間」は、私だけでなく日本人の多くの人が求めているのだ。それにもかかわらず、新築マンションの住空間は、未だ非常に貧しい。

神戸市御影に、「蘇州園」という建物がある。(写真)

https://soshuen.jp/

日本生命の創業者が建てたという木造和風建築で、築80年。現在は、オーナが代わり、レストランや結婚式場などに利用されている。庭園は、四季折々の木が一本づつ手入れされている。

従業員さんや庭師や大工や清掃員や建築士など多くの人がこの建築物に携わってこられたことが伝わってくる。

また、ここに外国などから招かれた来客を接待した歴史を感じる。どんな国際的な出会いがここにあったのだろう。レストランのウェイターさんは、いろいろなエピソードを話してくれた。

建物にHistoryStoryがある。これが新築住宅よりも中古住宅が選ばれる理由である。

関連記事:https://www.dios.co.jp/ja/archives/3214

「使い捨て」られる住宅~国際比較から見える日本の新築住宅

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(写真:大阪市の江戸堀、2020年3月撮影)

関連記事:https://www.dios.co.jp/ja/archives/3214

前回のブログ記事で、日本の住宅は欧米先進国と比較すると、新築が多く、中古住宅の流通は著しく低調であるデータを示した。

この現象の原因を一言で表現すると「使い捨て」だと考えられる。「使い捨て」とは、使い捨てライター、使い捨てコップ、使い捨ておしぼりなど、一度使用したら、洗濯、清掃、修理、変更を行わず、廃棄する。空き缶やペットボトルなどは、一度使用して、廃棄されるが、その廃棄量は膨大である。

実は、建物を解体する際に出る廃棄物は、一般に知られていないが、環境負荷がなによりも最も高い。写真は、本日私が大阪市西区江戸堀で見た光景である。小さい土地で解体作業が行われていた。重機が鉄骨を壊してトラックに積むが、この廃棄物を一体どのように処理するのだろうか?

鉄筋コンクリート建物は、100年から200年もつと言われている。鉄はさびるので、建物の寿命はある。しかし、コンクリートにクラックが入ったときに、クラックを修理する作業を細目にしていれば、建物はまだまだ使うことができる。それなのに、この建物は全部解体されていた。

ここで、「使い捨て」の意味をさらに深く考えてみたい。車でガソリンを使って排気ガスを出すのは、石油という地下資源を燃やして、二酸化炭素を大気中に廃棄するということである。二酸化炭素は、再び戻って石油になることはない。循環していない。これを「使い捨て」という行為で、これを「公害」という。

私は最近、大阪市福島区の現在売り出し中の新築住宅と中古住宅の価格を、地価公示と建物の減価償却をエクセルで分析した。その結果分かったことは、新築の方が、中古よりも、減価償却分を含めると、若干割安であった。

使い捨てライター、使い捨てコップ、使い捨ておしぼりが安いのと同様に、使い捨て住宅は、安くできる構造をもっている。大量生産、大量消費によって、工場で安価な建材を製造を可能にして、熟練した大工でなくても施工が可能にしてコストを抑えることができる。

その安い原価で大量販売することで、景気を刺激することができる。生産者と消費者と景気経済は、恩恵を受ける一方で、人間と社会の環境負荷が増大する。日本の住宅は、「使い捨て」であり、環境に最悪の政策である。

不動産事業者は、この事を理解した上で、戦略を考えるべきである。

 

日本の中古住宅を国際比較してみる〜宅建業の産業構造改革

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この表は、日本の住宅の問題点を、端的に表している。

日本の中古住宅の割合は、14.7%である。つまり、日本では、住宅の購入を考えている人は、85.3%が新築のマンションか戸建を購入して、14.7%の人だけが中古マンションか、中古戸建を購入している、という意味である。

図の通り、日本を、米国、英国、フランスなどの欧米先進国と比較すると、中古住宅が選択される可能性は著しく低い。

なぜだろうか?

実際に、私が日本の新築住宅と中古住宅を内覧してみた体験を振り返って考えてみると、「これだったら新築を選ぶだろうな」、と言わざるを得ないという実感がある。良い物件であれば、中古でもかまわない、と思いながら、実際に複数のいろいろな物件を見てみると、やっぱり新築の方が魅力的なケースが少なくない。

中古物件も、リノベーションを充分に綺麗にいている。しかし、新築が3000万円で、中古が2500万円だと、新築の方が良いように思える。日本の中古物件は、思ったほど安くないのだ。

中古物件の価格に失望した買主は、新築の美しい販売センターへ向かって、未完成の物件を、模型とコンピューターグラフィックスを見て購入を決断する。

欧米先進国は、どうなのだろうか?

(1)新築と中古の間の価格差が大きいのは想像できる。どのくらいの差か?

(2)価格以外にも、中古住宅の魅力があるはずである。それは何か?

(3)買主が購入を決断するためには、不安があってはいけない。不安を払拭するためには、何が欠けているのか?