人材不足が深刻になる中で、「どうやって採用するか」「どこから人を連れてくるか」という議論は、ここ数年で急速に増えました。
国内か、海外か。
新卒か、中途か。
専門スキルは何か。
しかし、現場で長く人の“生活”に関わってきた立場から見ると、採用がうまくいくかどうかを分けているのは、入社前の条件よりも、入社後の生活が回るかどうかだと感じます。
採用が決まっても、定着しない理由
採用担当者の方と話していると、こんな声を聞くことがあります。
- 採用はできたが、半年〜1年で辞めてしまった
- 仕事の能力に問題はなかった
- しかし、生活面でストレスが大きかったようだ
この「生活面」という言葉の中には、実に多くの要素が含まれています。
住まい。
通勤。
家族。
医療。
行政手続き。
子どもの教育。
日常のちょっとした不安。
これらは、人事や採用の専門領域ではありません。
しかし、本人にとっては仕事と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素です。
見落とされがちな「分業の視点」
多くの企業では、採用は人事部が責任を持ち、業務は配属先が引き受けます。
一方で、「生活」は誰が設計し、誰が支えているでしょうか。
海外赴任や外交の世界では、この分業はとてもはっきりしています。
- 採用・任命:組織
- 業務:所属先
- 生活:専門の外部パートナー
生活を“本人任せ”にしないことが、結果的に任務や仕事の成功率を高めてきました。定着は「偶然」ではなく「設計」できる新しい環境で力を発揮できるかどうかは、本人の努力だけで決まるものではありません。
- 安心して眠れる住まいがあるか
- 家族が不安なく生活できているか
- 困った時に相談できる先があるか
こうした土台が整ってはじめて、仕事に集中できる状態が生まれます。
採用が成功するかどうかは、内定通知の瞬間ではなく、生活が回り続けているかどうかで決まるのだと思います。
採用を「点」で終わらせないために
これからの時代、人を採ること自体は、ますます難しくなります。
だからこそ、採用を「点」で終わらせず、入社後の生活まで含めた「線」として考える視点が、より重要になるのではないでしょうか。
誰が、どこまで、何を担うのか。
その役割分担を考えること自体が、採用成功の一部になってきています。
